なぜ日本では長時間労働がなくならないのか?

世界を見ても日本は労働時間は異常に長い。そして、それが問題とわかりつつも遅々としてこの問題が解決しないのはなぜであろうか?それには、日本の雇用制度が深く関わっている。
 

日本の雇用制度で特徴的なのは「終身雇用制度」である。海外にくらべて、日本では雇用が非常に強く守られていて、会社はなかなか社員を首にできないシステムになっている。この終身雇用は社員にとっては安心して働ける制度であるが、じつはこの制度が長時間労働を生み出さざるを得ない原因となっている。

 

景気などの影響により、会社の仕事量は変化するのはやむを得ない。その場合、会社の経営者としては、どのような対処法があるだろうか?おもに次の3つの方法があるだろう。

 

(1)正社員とパート社員を組み合わせて、仕事が減ってきたときにパート社員を解雇する。

(2)会社の仕事量に合わせて、正社員を解雇したり新規雇用したりする。

(3)正社員の数は固定しておいて、労働時間の長短で仕事量の変化に対応する。

 

(1)で対応できれば良いが、業態によってはパートで雇用調整するのが難しい場合も多い。今の日本では(2)の正社員の雇止めは制度的に難しいので、どうしても(3)の対応にならざろう得ない。

 

景気変動などにより仕事量が変化した場合に社員の労働時間の長短で対応する事を考えると何が起こるであろうか?

 

経営者としては考えるのは、仕事が一番少なくなった時でも余剰人員が出ないようにすることであろう。つまり仕事が一番少ないときにその仕事量にちょうど見合うだけの社員数にするわけだ。すると、通常の仕事量の時は慢性的な人手不足になり残業で対応するしかなくなる。経営者としては、残業代を払っても新規に社員を雇うよりはコスト安になると考えるわけだ。つまり長時間労働を雇用の調整弁にしていることになる。

 

一方、終身雇用は日本の会社のジェネラリスト志向にも結びついている。会社の仕事は時代とともに内容が変化していく。これまであった仕事がなくなって、新しい別の仕事が発生することはよくある。このような場合、アメリカではその仕事をしていた人をクビにして、新しい仕事に適した専門家を雇う。つまりその人の専門性と仕事内容が基本的には一致している。
ところが日本では、社員を簡単にクビにできないので、人事異動で対応することになる。このために、専門家社員よりも何でもそつなくこなすジェネラリスト社員の方が経営者にとっては使いやすい。
つまり日本の終身雇用制度は長時間労働と専門家軽視(ジェネラリスト志向)と言う2つの弊害を生み出している。

 

確かに終身雇用制度によって、安心して働ける環境にはなるというプラス面も大きいが、その対価として長時間労働とジョブローテーションと言うマイナス面を払うことになる。何事も表と裏があるものだ。